
STORY
富士山は山頂を目指さなくても楽しめる!五合目までの“富士山1/2登山”に挑戦
神聖な世界の入口となる金鳥居をくぐる
富士急行線(富士山麓電気鉄道)の富士山駅北口から右側へ3分ほど歩くと、国道139号にそそり立つ「金鳥居(かなどりい)」があります。高さ9.7m、吉田口登山道の初めての鳥居であることから「一の鳥居」とも呼ばれています。鳥居の先は富士山の神聖な世界であり、俗界との境界線と考えられています。鳥居越しに見える富士山はとても大きく感じられます。果たして中間点の5合目まで登れるだろうか…。少しの不安とそれを上回るワクワク感が胸をよぎります。
まずは北口本宮冨士浅間神社を参拝
金鳥居をくぐると長い登りの始まりです。富士講信者を世話した御師(おし)たちの屋敷を横目に20分ほど歩くと「北口本宮冨士浅間神社」に着きます。いまから1900年以上前、この地を訪ねた日本武尊(やまとたけるのみこと)が大塚丘(おおつかやま)から富士山を遥拝(麓から霊山を参拝する)しました。その後、大塚丘に富士山を神格化した女神の木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)をはじめとする3柱の神様と日本武尊を祀る社殿が建立されます。これが「北口本宮冨士浅間神社」の始まりで、788年に大塚丘から南側に150mほど離れた現在地へ遷座しました。富士講信者はこの神社に参拝してから本殿右奥の登山門をくぐり、山頂を目指したのです。

樹齢300年以上のスギ、ヒノキの巨木が続く参道でしめ縄を張った巨岩を見つけました。「角行(かくぎょう)の立行石(たちぎょういし)」といい、富士講の開祖・長谷川角行は真冬にも関わらず、岩の上で裸身になり、つま先立ちで30日間も富士山を遥拝し続けたそうです。凡人にはとても真似ができません。


300年続く茶店がリニューアルして、さらに便利に
北口本宮冨士浅間神社から舗装道に出て、大塚丘を過ぎると、すぐ右側に「吉田口遊歩道」の案内板が見えます。本来の吉田口登山道は舗装道を進むのですが、ここは吉田口遊歩道に入ります。なぜなら、こちらは森の中を歩く遊歩道で、自動車の心配がないからです。
遊歩道入口から1時間20分ほど歩くと、中ノ茶屋に着きました。登山門から馬返しまでの中間点に立つことが店名の由来で、300年以上の歴史があり、2025年5月に1階がリニューアルされました。4~10月の営業期間中は、みたらし団子、かりんとう饅頭、吉田うどんなどが味わえ、ハイキングやトレイルランのレンタルシューズ、シャワー室なども完備しています。「富士山1/2登山証明書」の申請書も配布しているので、希望者は忘れずに。
馬返しの鳥居を守るのはサルの石像
中ノ茶屋を出発する勾配がきつくなってきます。1時間ほど歩くと大石茶屋の跡地に着きます。この辺りは天然記念物・レンゲツツジの群生地で、例年4月下旬から5月初旬には色鮮やかな赤い花々が観賞できます。茶屋の記憶を伝える富士講の石碑を見て、もう30分ほど歩くと「馬返し」に到着です。その名の通り、この先の登山道は狭くなるため、人や物資を運んできた馬は麓へ返されたそうです。現在は毎年4~11月に富士山駅と馬返しを結ぶ路線バスが1日2往復しています。体力に不安な方は利用してもよいでしょう。
バス停から少し登ったところに茶店「大文司屋(だいもんじや)」があります。馬返しにはかつて4軒の山小屋があり、そのうちの1軒がこの店です。一時廃業して、明治大学山岳部OB会のクラブハウスに貸し出されましたが、2020年から半世紀ぶりに営業を再開しました。6代目の羽田徳永さんは気さくな方で、コーヒー、あんみつなどを味わいつつ、会話を楽しむ常連さんも多いそうです。ここから吉田口五合目の上にある佐藤小屋まで山小屋はありません。ペットボトル飲料(300円/本)など必要に応じて購入しましょう。

茶店の先には石の鳥居が立ち、合掌したサルの石像1対が出迎えてくれました。富士山は庚申(かのえさるどし)年に一夜にして出現したという伝説から、富士山のお使いはサルとされたようです。大正時代(1912~1926年)には鳥居の奥に心身を清める禊所(みそぎしょ)が設けられました。


一合目の途中で不思議な仕掛けを発見
馬返しの鳥居をくぐると、登山道の勾配が急になります。足元に注意しながら一歩一歩進むと、地面に大きな石が詰まった木枠を見つけました。浸透桝(しんとうます)といい、雨水を地下に浸透させて登山道が削れないように守るための工夫です。赤い屋根の鈴原社が見えると一合目に到着です。御祭神は天照大神、その本地仏・大日如来坐像が祀られていましたが、現在は北口本宮冨士浅間神社に遷座しています。馬返しから一合目までは15分ほどです。
女人禁制の歴史を伝える二合目の小社
一合目から二合目へは30分ほど。途中の一合五勺には山小屋レッキスの跡地と案内板が見られます。この山小屋の名物はレッキスというカルピスに似た飲料水で、登拝者の楽しみだったようです(現在は、飲むことはできません)。二合目には富士山の噴火を鎮めるために建立された冨士御室浅間神社の社殿跡と小さな社が見られます。富士山は1872年まで女人禁制の山で、女性が登れるのは二合目まででした。
案内板の絵葉書に三合目のにぎわいをみる
二合目を出発すると、すぐに御室浅間橋があります。橋の下に冷え固まった溶岩流があり、所々に御釜(おかま)と呼ばれる穴が見られました。語り伝えでは、この穴はどこまでも果てしなくつながっているそうです。
細尾野林道を渡り、もうひと頑張りすると三合目に到着です。江戸時代には「見晴茶屋」と「はちみつ屋」の山小屋があり、麓から登って来た人の多くが昼食を食べたことから中食堂(ちゅうじきどう)とも呼ばれました。


案内板には明治末期から昭和初期の絵葉書が紹介され、昔の盛況さが分かりました。二合目から三合目へは20分ほどです。

滝のような大汗をかきつつ四合目に到着
三合目から四合目へ。途中、息を整えるために立ち止まる回数が増えてきました。馬返しから五合目までは樹林の中を登るため、日差しはきつくないのですが、風通しはあまりよくなく、全身から吹き出した汗がボタボタと地面を濡らします。意識して細かく水分を取り、塩分を含んだ飴をなめます。時折、木々の合間から見える景色にホッとしました。
四合目は案内板のみですが、昔は大黒天を安置した山小屋があり、大黒小屋と呼ばれました。山小屋は御師が所有し、夏の初めに大黒天像を背負って上がり、秋には背負って下山し自宅に安置したそうです。

トレイルランナーの声援に元気をもらう
さあ、吉田口五合目まで残り一合です。急く気持ちも分かりますが、五合目までは45分もかかるのでゆっくりと登りましょう。吉田口登山道はトレイルランニングの人気スポットでもあり、多くのランナーに出会います。中間点の四合五勺へ向かう際、天狗のような軽い足取りで下山してきたランナーから「もう少しですよ」と励ましの声をかけられました。優しい気遣いに元気が湧いてきます。四合五勺には御座石神社と井上小屋跡があります。御座石は神の依代となる石を意味し、かつては岩壁の上に社殿がありました。室町時代はここまで女性も登れましたが、江戸時代に二合目までに改められたそうです。
五合目から佐藤小屋までもうひと頑張り
この先、登山道は岩場のようになり、ほどなく五合目の中宮に到着です。富士山は麓から山頂まで草山(くさやま)、木山(きやま)、焼山(やきやま)に三区分され、五合目の中宮が木山と焼山の境界でした。草山と木山の境界は馬返しです。江戸時代、中宮には4軒の山小屋があり、入山料にあたる山役銭(やまやくせん)を徴収したそうです。山小屋「たばこ屋」跡の稲荷社、同じく「不動小屋」跡の雲切不動神社を経て、林道に出たら右側に進み、富士守稲荷社を目印にして登山道に戻ります。舗装道に出たら横断して、登山道をひと登りすると「佐藤小屋」に到着です。通年営業する山小屋で、宿泊(予約制)のほか、ラーメン、鍋焼きうどん、カレーライスなどの食事提供も行っています。

Information
佐藤小屋住所:山梨県吉田口富士山五合目
営業期間:夏季6/1~9/30 冬期10/1~5/31
営業時間:食堂9:00~15:00
公式サイト:https://www.fuji-satogoya.com/
スバルライン五合目から山頂を拝む
佐藤小屋からスバルライン五合目までは小御岳道(こみたけみち)を30分ほど歩きます。
佐藤小屋を出発すると、視界が一気に広がります。六合目への分岐点・泉滝を過ぎると、右側には富士吉田市の町並みや樹林帯が望めました。空気の澄んだ日には山中湖も見られるようです。

観光用の引き馬に乗る親子連れを見送り、登山口ゲートをくぐるとゴールです。

スバルライン五合目には、富士山登山口ゲートがあり、2025年は7月1日から9月10日まで通行できます。富士山登山口ゲートは午後2時から翌日の午前3時まで閉鎖されますが、下山者は通行できるので心配ありません。通行料は大人一人4000円です。

スバルライン五合目にはレストラン、売店などが並び、バスターミナルの北側の休憩所から富士山の山頂が望めます。

ここから富士駅までは登山バスに1時間ほど乗ります。出発時間まで富士山の雄大で美しい山容を眺めました。

Information
高速バス・路線バス 運行状況インフォメーション
■富士スバルライン五合目~富士山駅・河口湖駅(富士スバルライン五合目 マイカー規制シャトルバス&路線バス)
運行期間:2025年7月1日~9月10日
※期間中は、富士スバルライン五合目⇔富士山駅・河口湖駅は1時間おきに運行
※路線バス。事前予約制ではありません
所要時間:片道約65分(富士スバルライン五合目⇔富士山駅間)
運行会社:富士急バス
公式サイト:富士スバルライン五合目~富士山駅・河口湖駅路線
※五合目と最寄りの富士山駅を結ぶ路線バスのほか、都内や関東圏を直接結ぶ高速バス(事前予約制)もあり
■富士山五合目~バスタ新宿
運行期間:2025年7月1日~8月31日
※期間中は、富士山五合目⇔バスタ新宿まで毎日運行
所要時間:片道約2時間35分
運行会社:京王バス・富士急バス
公式サイト:富士山五合目~バスタ新宿路線
■御殿場・山中湖・河口湖・富士山五合目~横浜市内(日吉・センター北・たまプラーザ・市が尾)
運行期間:2025年7月12日~8月31日
※富士山五合目から日吉・センター北・たまプラーザ・市ヶ尾までは期間限定。御殿場・山中湖・河口湖発は、毎日運行
運行会社:東急バス
公式サイト:御殿場・山中湖・河口湖・富士山五合目~横浜市内路線
富士山1/2 登山認定書をゲットしよう!
富士吉田市では7月1日から10月31日までの期間中に、富士山の麓から五合目まで登山された方に「富士山1/2登山認定書」を発行しています。手続きは中茶ノ屋、もしくは富士吉田市観光ガイドのホームページより申請書を入手して、中ノ茶屋または馬返しと、富士山五合目で本人が確認できる写真を携帯・デジタルカメラなどで1枚ずつ撮影し、富士吉田市観光案内所または道の駅富士吉田に提出するだけです。登山認定書取得者の中から抽選で5名に粗品のプレゼントもあります。
富士山1/2登山は山頂登山よりも登山者が少なく、自然豊かで静かな登山が楽しめました。江戸時代の富士講信者と同じ道を歩み、その苦労や達成感を共感することで、富士山の新たな魅力も発見できます。ゴールは五合目ですが標高2300mまで登ります。雨具、飲料水、行動食など一般的な登山装備で望みましょう。靴はトレッキングシューズがおすすめです。
富士吉田ルート0~5合目登山モデルコース
モデルコース
富士山駅
徒歩約3分
金鳥居
徒歩約20分
北口本宮冨士浅間神社
徒歩約80分
中ノ茶屋
徒歩約90分
馬返し
徒歩約15分
一合目
徒歩約30分
二合目
徒歩約30分
三合目
徒歩約20分
四合目
徒歩約45分
五合目
徒歩約20分
佐藤小屋
徒歩30分
スバルライン五合目
バス約65分程度
富士山駅
※この記事は、2025年7月時点の情報をもとに作成しています。
※情報は変更される場合もありますので、お出かけ前に事前に公式サイト等でご確認ください。
執筆:内田晃
自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地など歩き取材を得意とする。日本旅行記者クラブ会員

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この記事は2025年08月15日の情報です。 文:DiGJAPAN! 編集部


















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