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熱中ニッポンMANAKA

STORY

 

熱中ニッポン vol.3
アジア・南米で人気の着物ドレス
MANAKA流「和」の再生術とは?

 

 
 
芸能、アート、農業、ファッション、音楽、IT企業など、さまざまなグラウンドで活躍するリーダーにフォーカスする熱中ニッポン。第3回目は、ニッポンの「和」を独自の感性で現代によみがえらせているブランド、「MANAKA(マナカ)」の代表 山中由紀子さんにお話を聴きました。
 
「MANAKA」は、着物の要素を取り入れた金魚ドレス、鳳凰ドレスを中心に展開するブランド。「MANAKA」のドレスは今、台湾、ブラジル、香港、シンガポール、キューバなど世界各地の女性から熱い注目を集めています。「伝統は革新の連続」と語る山中さん。その言葉の背景にある、彼女のストーリーを深く探ります。
 

金魚と鳳凰。MANAKAの着物ドレス

 
 — まず、最初に聴きたいのは「MANAKA」の「和」の定義についてです。金魚ドレスや鳳凰ドレスは、着物とは全く別の世界観ですよね。山中さんは「和」をどのようにとらえていますか?
 
山中:「MANAKA」のブランドコンセプトは、「伝統的な和」の要素と「現代の感性」の融合をベースとしています。私たちの現在の生活スタイルは、さまざまな国の要素と日本文化とが融合されています。そんな日常の中で、ふとした瞬間に「伝統的な和の要素」を感じる瞬間がもっと増えたらいいなと。そして、スタイリッシュでお洒落に新しい「和のスタイル」を楽しんでもらいたくて。そんな想いから、日本の職人、デザイナーとともに、丁寧に一つひとつ心を込めて「MANAKA」の商品を制作しています。

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凛とした美しさを感じるドレスを目指す、と語る山中さん
 
 — これまでの着物ドレスと「MANAKA」のドレスはかなり違いますね。一般的な着物ドレスは古典的で豪華絢爛という感じですが、「MANAKA」はもっと軽やかで新しくて、そして魅惑的。
 
山中:一般的なリメイク着物ドレスは、着物の帯や生地を使用してドレスやビスチェなど作るパターンが多いと思います。どちらかというと、元の着物をなるべく活かして作っていることが多いように思います。「MANAKA」のドレスやワンピースは、着物という型にはとらわれず、着物の要素を分解していって、「MANAKA」のデザインに取り入れ新たな作品として生み直した感覚です。
 
また、着用して動いた際にも、ドレスでありながら「和」の要素が動きの中でも感じられ、女性がより美しく見えるドレスにしたいと考えました。伝統的着物より女性の身体のラインがきれいに見えますね。そういう点では、より女性を魅せることを強く意識しています。

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エネルギーに満ちあふれた鳳凰ドレス
 
 — 金魚ドレスや鳳凰ドレスは振り袖のように袖が大きく長いですね。
 
山中:金魚ドレスを着て歩いたり、風を受けたりしたときに、まるで金魚が泳いでいるようにデザインしました。鳳凰ドレスは、鳳凰が舞い降りたような動きが出るように、そして、着たときには強いエネルギーを感じてもらえるように制作しました。
 
ファッションのすばらしいところは、女性が袖を通したその瞬間に、ドレスに命が吹き込まれることです。同時に、ドレスが着る人にエネルギーを与えることもできる。「MANAKA」のドレスを着る女性達に、パワーやエネルギーを感じてもらえることを目指しています。

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ゆらゆらと魅惑的な金魚ドレス
 
 — 深紅、墨、金など、色づかいにも特徴がありますよね?
 
山中:赤色は、古来「強さ」を表わす色として用いられてきましたし、「情熱」というイメージもあります。色の組み合わせとしては、黒×猩猩緋(赤系)×金は、戦国大名の間で陣羽織などに使用されてきました。「MANAKA」の奥底には、「凛とした美しさ、内に秘めた強さ・情熱」を表現したいという想いがあります。現代社会で戦う女性には、スーツを脱いで、「MANAKA」のファッションに袖を通すことで、自分自身をもっと楽しんでもらえたらと。この想いを表現するために、深紅(赤)、黒(墨)、金という色づかいには重要な意味をもたせています。
 

海外から日本へ。逆輸入マーケティング

 
 — 2015年は海外での活躍が目立ちましたね。どこの国でどんな活動をされましたか?
 
山中:日本では、六本木ヒルズumu(ウム)で開催された 『-アート蚤の市- 』や、HMJ、TOKYO DESIGN WEEKなど、アート系イベントを中心に販売をしてきました。ですが、それ以上に2015年は海外のイベントなどで「MANAKA」を知ってもらう機会に恵まれました。

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TOKYO DESIGN WEEK2015
 
日本とブラジルの修好120周年を祝う、ブラジル開催の「花火祭り」では、「KAO=S」のボーカル川渕かおりさんに「MANAKA」の金魚ドレスを着ていただきました。また、TEDx 香港のイベントライブでは、ミュージシャンのSawaka Katalynaさんに「MANAKA」の鳳凰ドレスを着ていただきました。

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ブラジルで金魚ドレスを着たパフォーマンス

<西内ひろさん×大島央照さん>のプロジェクト #‎PASSPORT BOOK vol.1 IN CUBA.の撮影でも、キューバで「MANAKA」の金魚ドレスを着てもらいまして、大きな反響をいただいています。
海外のイベントで、アーティストやモデルさんが「MANAKA」を着ることで、外国人のみなさまにも日本文化に興味を持っていただくきっかけになれたら、すごくうれしいです。
 
熱中ニッポンMANAKA#‎PASSPORT BOOK vol.1 IN CUBA.の撮影のワンシーンを金魚ドレスが演出


 — 外国人の方は「MANAKA」を見てどんな反応をしましたか?
 
山中:2015年12月、シンガポールの高島屋で開催されたKIMONO KOLLAB Singapore popupイベントで、「MANAKA」は初の日本ブランドとしてコラボ参加させていただきました。鳳凰ドレス、着物風ポンチョ、着物生地の日傘、下駄などを販売させていただいたのですが、現地でのお客さまの反応を見るうちに、着物に対する価値観の違いを強く感じました。
 
熱中ニッポンMANAKA
シンガポール高島屋店で販売したドレス

シンガポールで販売した商品の着物生地は古着の着物生地だったのですが、シンガポールのお客さまは、生地のシミ自体にもヴィンテージとして価値がある、と判断しているように感じました。日本で着物にシミがあった場合、その着物の価値は下がってしまいますので、私は日本人の感覚で、出来る限りシミがないモノを選択して商品を制作しました。でも、シミがある生地を使用している洋服でも売れるのです。ヴィンテージの着物に関して海外市場でのポテンシャルを強く感じましたね。着物文化を後世に残していくためには、こうした海外の多様な需要を受け止めなければと思います。世界が日本をどう評価しているのか、肌で感じながら「MANAKA」を成長させたいですね。

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ポンチョの生地もヴィンテージ
 

金融窓口係からファッションへ。異色かつ華麗な転身

 
 — 山中さんは、大学卒業後、金融機関で窓口係をされていたそうですね。金融からファッションの世界へ。かなり異色の職歴だと思いますが?
 
山中:大学を卒業後、8年間は金融機関の仕事をしました。2年間の窓口業務を経てPR担当 となり、Webサイトの立ち上げを任されることになりました。ちょうど、インターネットが普及し始めた頃ですね。もともと、「想いを伝える」仕事がしたかった私には、このWeb制作の仕事がひとつの転機となりました。働きながら土日は専門学校に通い、金融機関のWebサイトの新規立ち上げやリニューアルを担当。その後独立し、化粧品会社やエンターテイメントの分野のWebやDTP制作、プロダクトデザインの制作などを開始しました。業種は異なりますが、金融時代、窓口で直接お客さまと接し、それをWebのコミュニケーションに置き換える経験ができたことは、私にとってとても重要です。

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デザインに関しても独学で学んだという山中さん
 
 — デザインの中でも日本の和の世界を深く掘り下げたのは、なぜですか?
 
山中:20代の頃、アメリカに滞在していたとき、日本の着物や伝統について尋ねられてもきちんと答えることができず、日本文化に無知な自分をとても恥ずかしく感じた体験が元になっています。日本人ならば日本のことをもっと深く理解しなくては、と思い学び直しました。
 
そして、繊細で美しい日本の和のデザインのすばらしさに傾倒していくうちに、日本の伝統的な技術が、後継者の問題で受け継いでいけない危機にあることも知りました。その現実を知ったとき、私に何かできることはないのか、模索しはじめたのです。そんな想いがきっかけで、30代の初めにWebの仕事とは別に、和と現代の融合を求めて仲間達と活動を始め、2013年に「MANAKA」を誕生させました。
 

MANAKAを支える職人の技術

 
 — 「MANAKA」の商品には職人さんの力が大きく関わっていますよね。
 
山中:私の役割は「MANAKA」のコンセプトとデザインイメージを考えること。それから完成した商品を世に送り出すことです。制作工程においては、ファッション、革製品、下駄、手ぬぐいなど、それぞれの商品を一緒にカタチにしてくださる職人、デザイナーのみなさまの存在がとても大きいです。
 
手ぬぐいは、創業140余年の東京日本橋の老舗、戸田屋商店さんで染め上げています。色合いの美しさ、風合いのよさは、伝統工芸に指定された「注染(ちゅうせん)」という染色方法で、熟練の職人達による手染めだからこそ実現できています。人肌に直接触れる生地は、吸水性抜群の上質地を使用しています。切りっぱなしの端処理は、速乾性のための昔からの知恵です。1枚の手ぬぐいに、沢山の工程を経た熟練の職人の技が詰まっています。

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七宝をアレンジした手ぬぐい
 
また下駄は、昭和12年創業、静岡市の株式会社水鳥工業さんで制作しています。職人が一点一点手彫りで彫った木地は、足裏に心地よくフィットします。靴と同じように左右の足型に合わせ、足の甲をつつみ込むように鼻緒を挿げることで、一日中履いても疲れない下駄になっています。一度「MANAKA」の下駄を履いていただくと、きっとそのフィット感に驚かれると思います。

熱中ニッポンMANAKA
サンダルのように気軽に履ける下駄
 

ゴールはビジネスとして昇華させること

 
 — 山中さんは「MANAKA」を今後、どんな風に育てていきたいですか
 
山中:「MANAKA」が目指しているのは、衣食住のすべての分野で伝統技術と現代の融合を表現することです。ファッションだけでなく、生活の分野でも日本の伝統技術と融合した商品開発を増やすことで、伝統技術に触れ、使う機会を拡げていきたいです。また、日本のすばらしい伝統技術を後世に残すためには、その技術を知っていただくだけではなく、商品が売れ続けなくてはいけません。「MANAKA」として、売れるものをデザインできなければ意味がないのです。ビジネスとして成功させなくては、伝統技術を残せないですから。

 — ビジネスとして成功させるための、次なるアクションは?
 
山中:日本の伝統文化にもっと興味を持ってもらえるようなショーを企画して、国内外にネットで動画配信をしたいです。パフォーマンス、ファッション、映像、音のコラボレーションで、日本人の伝統的な美学をまったく新しい感覚でよみがえらせたくて、仲間とともに準備中です。
また、国内、海外ともにオンラインショップで販売できるよう準備を進めています。そして、「MANAKA」の商品を実際に手にとって触れてみてもらうために、国内でも店舗販売していただける先を探していきたいです。

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 — 最後に、読者へのメッセージを。
 
「伝統は革新の連続であって、時代の変化を恐れてはいけない。今、作り出すものが新たな伝統になるかもしれないのだから」。そう話してくれた職人さんの言葉を、とても大切にしています。
 
日本の伝統文化・技術を尊重しながら後世に伝えるために、時代の変化に合わせ、新たな現代の美意識や要素を加えたものを制作し続けていきたいと思います。そして、「MANAKA」の商品を手にとってくださった方が、楽しんでもらえるように、幸せな気持ちになってもらうために、さまざまな分野でチャレンジをしていきたいです。
 

取材後記

私が「MANAKA」の商品をはじめて見たのは、TOKYO DESIGN WEEK 2015の会場でした。個性的な演出のブースが並ぶ会場で、「MANAKA」のブースにはひときわ多くの外国人が足を止めていました。ドレスや手ぬぐいなど個別の商品を手にとって見るだけでなく、「MANAKA」のブース全体の世界観に見とれている、そんなお客さまが多かったように思います。海外のみなさまに「和」の文化をもっと楽しんでもらいたい、でも、その「和」の表現は、従来の型にはめずにあえて解放する。山中さんのしなやかで自由な発想が、これからも「MANAKA」をさらに大きく世界中に羽ばたかせていくと思います。

熱中ニッポンMANAKA

プロフィール

山中 由紀子 Yukiko Yamanaka
MANAKAプロデューサー&デザイナー。
デザイン事業を請け負う株式会社 ART DIVEの代表取締役。
「東芝EMI」クラッシックや日本ブログ大賞などのWEBプロジェクト、地域活性化プロジェクトデザインや婚礼機材デザイン制作ディレクターなど、数々のデザインプロジェクトにディレクター・デザイナーとして携わる。ブランド「wayomix」のプロデューサーとしても活動している。

Information

MANAKAブランドサイト
http://www.manaka-japan.com/
MANAKA公式Facebook
https://www.facebook.com/manaka.japan/
MANAKAオフィシャルInstagram
https://www.instagram.com/manaka_japan/
 
撮影協力
西麻生kasahara
東京都港区西麻布2-2-2 NK青山ホームズA3
http://www.nishiazabu-kasahara.com/index.html
 

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この記事は2016年03月09日の情報です。 文:Yuko Tsuruoka

 

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