熱中ニッポンvol.4 有田まちづくり公社の挑戦

STORY

 

熱中ニッポン vol.4
観光で町の”稼ぐ力”を取り戻せ!
有田まちづくり公社の挑戦

 

 
 

芸能、アート、農業、ファッション、ITなど、さまざまなグラウンドで活躍するリーダーにフォーカスする熱中ニッポン。第4回目は、観光で町の経営を活性化する、株式会社有田まちづくり公社の取締役 兼 クリエイティブディレクター 藤山雷太(ふじやま らいた)氏にインタビュー。

有田まちづくり公社が発足してから、まだ1年。ふるさと納税3億円達成、スターバックスアートワークを手掛けるなど、有田町に次々と新しい旋風を巻き起こしています。2016年、有田焼創業400年のメモリアルイヤーを迎える有田町で、有田まちづくり公社と藤山さんのチャレンジについてお聴きしました。
 

有田まちづくり公社とは?


ー 有田まちづくり公社とはどんな組織ですか?

 

有田まちづくり公社は、有田町の魅力を発信したり、有田町のコンテンツを新しいビジネスとして事業化するために生まれた組織です。2015年4月に発足して、10月には佐賀観光活性化ファンドの第1号案件として出資を受けました。有田商工会議所の中に事務所があって、社長の高田を中心に4名の常勤スタッフと5名の非常勤スタッフがいます。

私は大学卒業後、新卒でDeNAに入社しインターネットマーケティング・広告営業を勤めましたが、地域で何か貢献したい気持ちが強く、2011年に佐賀にUターンしました。伯父が経営していた窯元「しん窯」のECサイトを立ち上げ、有田焼の新しいブランドづくりを模索していた頃、社長の高田と偶然出会いました。高田の考え方や人柄に触れて、「地域の課題を解決し、地域に貢献するサービスを創りたい」と考え、有田商工会議所及び国のファンドである(株)地域経済活性化支援機構(REVIC - レビック)と連携して、有田まちづくり公社を立ち上げることになったのです。
 

201603182121_1.jpg東京から佐賀へUターンして有田まちづくり公社を立ち上げた藤山氏

東京から佐賀へUターンして有田まちづくり公社を立ち上げた藤山氏


ー 佐賀観光活性化ファンドとは?


ここ数年、地域の稼ぐ力を引き出して、顧客視点にたった観光地経営をする役割を担う日本版DMO(Destination Management/Marketing Organization)と呼ばれる機能が日本各地で生まれ始めています。有田町の場合は、REVICと佐賀県の全金融機関が共同で作った「佐賀観光活性化ファンド」から出資を受けた有田まちづくり公社が、そのDMOの役割を期待されています。

 

ー 有田まちづくり公社はどんなメンバーで構成されていますか?


年齢層は上から下まで幅広いメンバーで構成されてます。社長の高田は60代後半で、一番若いメンバーは20代前半です。まるで親子、いや孫くらいに離れています。また湯布院出身の高田を始め、全員がヨソ者です。このような多種多様なメンバーですが、全員移住して現在は有田町民です。大事にしているのは、地域の資源を活用し、地域の人たちと連携して、自分たちの頭で考えて実行することです。年齢とか出身とかそういう枠を超えて、自分達の頭で考え、実行すること。それが、はじめは小さくてもいい。この地域にいるメンバーで考えて、やること。これが大切だと考えております。だから結果としてヨソ者、若者、バカ者が集まってはいますが、本来はそこは重要ではなく、ちゃんと自分達の論理で考え、小さくてもいいから実行できること。これを大切にしているメンバーです。


67歳から24歳まで多様な人材で構成される有田まちづくり公社

67歳から24歳まで多様な人材で構成される有田まちづくり公社

 

ふるさと納税を300万円から3億円に


ー 有田町の経営課題とは?


有田という町は有田焼の発展とともに町が繁栄してきたけれど、有田焼という産業を大黒柱として頼ってきたため、有田焼の売上減少が町の収益減少に直結してしまっています。

また、人口減少でヒトやモノが抜けてしまい、町のあちらこちらに空き家ができてしまっています。ヒトやモノやコトといったコンテンツを強化し、空いた入れ物を活用して、いかに収益源に変えられるかが有田まちづくり公社のミッションです。


201603182121_2.jpg毎日身につける腕時計はしん窯で制作した文字盤と竜頭が有田焼のもの

毎日身につける腕時計は文字盤と竜頭が有田焼


ー 有田町の強いコンテンツとはどんなもの?


実は有田町って有田焼だけじゃないんですよ。糖度20を超える金柑や、名水を利用した棚田米や日本酒、牛・豚・鳥など豊富な農産物に加えて、トロトロの温泉、さらにまるで天空の城ラピュタのような雲海が現れたり、美しく神秘的な有田ダム、そして伝統的建築物が並ぶ町並みなど素晴らしいものが山ほどあります。名水や紅葉、ホタルや棚田など日本百選がこの小さな町に12もあるのです。ありとあらゆる癒しが凝縮してギュッと縮まっている、そんな町です。


日本の棚田百選「岳の棚田」は絶景ポイント

日本の棚田百選「岳の棚田」は絶景ポイント


ー有田の強いコンテンツをどうやって収益化するのですか?


まず、最初に取りかかったのがふるさと納税です。町役場、商工会議所と連携して、2014年は年間300万円ほどだったのが、2015年は始めてから4ヶ月で100倍の3億円にまでなりました。ポイントは、普通はインターネットでは買えないようなものをお礼の品としてチョイスしたことです。また、コンシェルジュサービスとして、カスタマーサポートを設置し、お客様の声を伺える環境を整えました。自分達でできるおもてなしを徹底的にやり、改善に改善を重ねていったことが数字に繋がった感じております。

今後、人口減少時代の中で、コストを削減しながら町をコンパクトに経営していく必要があります。若者は18歳まで地方で育ちますが、その後、大半が都会に出ていきます。地方で仕事を作るためにもITをどう活用していくかが課題で、ふるさと納税はまさにITを活用したケースでした。なので、有田まちづくり公社としては、まずふるさと納税を成功させるのが肝だと思っていました。
 

「カスタマーサポートを通じてお客様とコミュニケーションできるのが楽しい」と笑顔で語る藤山氏

「カスタマーサポートを通じてお客様とコミュニケーションできるのが楽しい」と笑顔で語る藤山氏

 

幅12メートルの巨大壁画に挑戦


ー ふるさと納税以外の新しい取り組みは?


2016年4月にオープンするKITTE博多に隣接のJRJP博多ビルに、新しいスターバックスの店舗ができます。その店舗に、幅12 メートルの有田焼の壁画を飾ってもらう予定です。


この壁画は、380枚のタイルで構成されていて、コーヒーの樹という有田焼には 珍しい図案が描かれています。スターバックスでは近年、その土地の文化や歴史へ敬意を表し、その土地由来の素材を使用した家具や、その土地にゆかりのある伝統工芸を設置し、店舗デザインに取り入れています。今回、JRJP博多ビルの新店舗の壁画について、スターバックスから「コーヒーの樹」と相談があったときに、頭の中に植物系の図案が得意なベテランの職人さんの顔がパッと思い浮かびました。すぐに彼のところに行って相談すると、12メートルという前代未聞のことに驚きを隠せない様子でしたが、それよりも挑戦したいという気持ちが強くて、気づいたら二人とも近くの公民館にダッシュしてました(笑)。12メートルの下書きをできる場所が、公民館以外に見つからなかったのです。模造紙を何枚も繋げて、最初のデザイン案を一気に描きあげました。

ふるさと納税はネット上の発信が主でしたが、リアルでの発信で何ができるかを考えたときに、街のド真ん中のコーヒーショップという人々が行きかうパブリックな場で、有田焼が自然に馴染むことを知ってもらえたらいいな、と思いました。有田焼って現代のライフスタイルに合っていて、なんかかっこいいねって知ってもらいたいなと。創業400年のメモリアルイヤーに、このスターバックスのアートワークに参加できたことに不思議なご縁を感じます。
 

スターバックスに飾られる有田焼の原画にはデザインのアイデアがびっしり(縮小版)

スターバックスに飾られる有田焼の原画にはデザインのアイデアがびっしり(縮小版)


ー 12メートルもの壁画、いったいどうやって制作しているのですか?


380枚のタイルに分割して描きます。これまで植物の図案は沢山描いてきたけれど、コーヒーの樹ははじめて。スターバックスからは「細くてかつ濃く」というオーダーでした。「細くて薄く」か「太くて濃く」ならできるけど、「細くて濃く」というのは難しかったですね。従来の有田焼はきっちりと色を塗っていますが、今回はあえてラフに色を塗ることで「生命の力強さ」を表現しました。お客様が入店した後、少しずつバーカウンターに近づくにつれて、コーヒーの樹が細部まで細かく描かれていることに気づくはずです。また、見る場所によっていろいろな表情を見せてくれることでしょう。

職人さんもコーヒーの樹をはじめて描くので、何十枚もコーヒーの樹の写真を見ながら研究しました。葉の枚数、コーヒーの実のつき方、枝がのびていく方向など、細部にもこだわりました。たとえば、有田焼ではぶどうの樹はよく描く図案なのですが、ぶどうの枝が横に伸びて行くのに比べ、コーヒーは木が上に上に伸びて行くのを表現しなくてはなりません。しかし、実際には横長の壁画なわけだから、描ききれない上の部分まで想像して表現する必要があります。
 

201603182121_3.jpg201603182121_4.jpg201603182121_5.jpg201603182121_6.jpg50年の経験がある職人 藤井さんも「コーヒーの樹は初めて」と語る

50年の経験がある職人 藤井さんも「コーヒーの樹は初めて」と語る


ー 制作していて苦労したところは?

 

生生地(なまきじ)を使ったので、非常にもろく割れやすかったところです。通常の有田焼は素焼きした生地に図案を描くのですが、今回は生生地だったのでちょっとしたことで欠けてしまう。実は、今回の壁画には、泉山の土が使われています。つまり、400年前の有田焼と同じ土地の材料でできています。現代の有田焼は天草の土を使っていて、泉山の土は使われていません。泉山は、今は有田焼にとって日本磁器発祥の聖地のような場所です。

また、非常に大きな壁画ですから、全体の仕上がりがつなげてみるまでわかりにくい。その上、コーヒーの枝や葉が複雑に絡みあう絵柄ですから、タイルとタイルのつなぎ合わせが難しくて。タイルの並び順に左から右へと描いていけば簡単ですが、今回は枝や葉の流れに合わせてタイルをつないで描いていきました。なので、画を描く職人さんと、タイルを運ぶアシスタントの息が合っていないと難しかったのです。タイルを運ぶアシスタントは、有田まちづくり公社のスタッフがやらせていただきました。

 

380枚のタイルには有田焼の聖地 泉山の土が使われている

380枚のタイルには有田焼の聖地 泉山の土が使われている

職人とまちづくり公社の二人三脚で制作は進んだ

職人とまちづくり公社の二人三脚で制作は進んだ


ー JRJP博多ビルに有田焼が飾られるのが待ち遠しいですね。


タイルが焼き上がって、並べて絵がつながったときはとても感動しました。スターバックスに多くの人達が集まって来て、有田焼のコーヒーの樹を見ながら、美味しいコーヒーを楽しむ。その世界観がとても楽しみで待ち遠しいです。

 

世界から有田町に人を集める方法とは


ー 有田町のインバウンドは今、どんな状況ですか?

 

欧米の方を中心に世界中から集まってきています。特に老舗窯元、幸楽窯の「有田焼トレジャーハンティング」。これは、有田焼の超膨大なデッドストックから廉価で器を掘り出し放題の企画です。まるで器の大海原を泳いでいるような気分になります。また、「うつわ男子」というオーダーメイドのガイドをやらせて頂いているのですが、それを動画を使い紹介したところ、インターネットで全世界中に広がりました。5万回以上シェアされ拡散され続けていて、さまざまな言語で問い合わせを頂いています。有田の先人が作ったものを、世界中の人々がお宝探しに集まる光景にとても感動しています。
 

藤山氏自身も有田町の空き屋に引っ越して住んでいる

藤山氏自身も有田町の空き屋に引っ越して住んでいる


ー 外国人の受け入れで他に計画していることは?


宿ですね。有田は元々宿泊施設が少ないのですが、最近は少しずつ増えてきました。特に窯元の敷地を活用して、アトリエと宿が合体したアーティストインレジデンスができましたし、オランダ人の方が有田に惚れて移住し町屋をリノベーションしたゲストハウスを運営していたりします。有田には日本で唯一のやきものの大学(窯業大学校)があるのですが、そこには町外から95%、女性比率が70%で留学生も多く、世界中からものづくりが大好きな若者たちが集まっています。そんな若者たちと外国人、そして地域が繋がる場づくりをしたいと考えています。
また、有田には「体験」と「イベント」が数多くありますので、体験民泊やイベント民泊をWebで紹介し、よりディープな有田を味わって頂けるようにしていきたいと思います。


有田町地域おこし協力隊の佐々木さんとは連携してイベントなどを企画運営している

有田町地域おこし協力隊の佐々木さんとは連携してイベントなどを企画運営している


ー 最後に、今後の目標をおしえてください。


有田まちづくり公社のコンセプトは「有+(ありたす)」なんですが、有田の「田」という字は、枠をはずすと+プラスが生まれます。人種とか年齢とか性別とか地域とか、そういうこれまでの枠を一旦横に置いて、人々が集える空間ができたらいいなと思います。ものづくりが大好きな人たちが集まるかもしれないし、なんとなく有田に来る人だっている。色んな人たちが枠を超えて、集まり、また、そのプラスの連鎖が他の地域へも綿毛のように飛んでいくといいなと思ってます。そんなふうに、枠にとらわれずにプラスを見つけて、ないものねだりではなくあるものを利用して、最終的にまちが自立できたらいいなと思います。

有田ってすごく有名だけど、行ったことある人は結構少ないまちかもしれません。観光もすばらしいけれど、実は有田は自然も文化もあってとても暮らしやすい。そういう有田の良さを発信して、興味を持ってもらって、遊びに来てもらって、いろんな人たちの受け皿になれたらいいなと思っています。

 

取材後記

 

「この自転車、乗っていいよって町の人が譲ってくれたんです。」

取材の待ち合わせ場所であるトンバイ塀に自転車で現れた藤山さんは、笑ってそう話してくれました。400年の歴史ある有田焼。会社ならかなりの長寿企業ということになります。そんな町で地域経営にチャレンジするのだから、周囲との軋轢に悩みそうなところですが、藤山さんと有田町の住民とのコミュニケーションはとても円滑なようです。

佐賀観光活性化ファンドからの資金調達、多様な人材での組織づくり、初年度にふるさと納税で目に見える成果を出したこと。有田まちづくり公社の取組みは地域経営のお手本のようですが、藤山さんは後付の成功談に浸ることなく、あくまでさらりと話してくれました。一方で、「いかに有田がすばらしいか」のポイントになるととても情熱的。あふれるアイデアを次々と実行していくスピード感は、話を聴いている人をワクワクさせる力があります。有田町の若きエース 藤山さんと有田まちづくり公社の活躍に今後も注目です。

(取材日:2016年2月19日)
 

有田まちづくり公社藤山雷太さん
 

プロフィール

藤山 雷太 Raita Fujiyama
佐賀県佐賀市出まれ。九州大学工学部卒業後、新卒で(株)DeNA入社。インターネットマーケティング部にて広告営業を経て佐賀へUターン。有田焼のECサイトの立ち上げや有田焼と異業種のコラボ企画「ロマンシング佐賀」などに携わる。しん窯執行役員を経験した後、2015年に(株)有田まちづくり公社立ち上げる。現在、(株)有田まちづくり公社取締役 兼 クリエイティブディレクター。

 

Information

株式会社有田まちづくり公社

https://aritasu.jp/

ari ta suオフィシャルInstagram
https://www.instagram.com/aritasu_tasu/

 

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この記事は2016年04月27日の情報です。 文:Yuko Tsuruoka

 

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