あわただしい日常生活から離れて、休日は大自然の静寂に包まれて心静かに過ごしてみたい。
そんな方にぜひおすすめしたいのが、宿坊体験です。
宿坊は古来から遠方からお寺を訪れる方のための仕組みでしたが、最近では心の安らぎを求めて来たり、仏教について深く知りたい、体験したい人が気軽に体験できるようになってきています。でも、宿坊に泊まったことがある人は、日本人の中でもまだまだ少ないのではないでしょうか。
今回は東京からたった2時間というアクセスの場所で本格的な宿坊体験ができるお寺、大陽寺に行ってきました。宿坊初体験のイタリア出身の記者ラウラの取材でレポートします。
大陽寺への入口
私が大陽寺を選んだ理由
東京から行きやすい場所にある宿坊体験は結構あるのですが、数ある宿坊の中で私がどうしても大陽寺に行きたかったのには理由があります。
1.1757年創建の古刹であること
日本のお寺は長い歴史の中で再建されていることも多いのですが、大陽寺は1757年に建てられた当時のままの姿で残っています。大陽寺の壁や柱のあちこちには、長い年月にわたって旅人を受け入れてきた歴史が感じられ、山門をくぐりはじめてお寺を目にした瞬間は、その荘厳さに言葉が出ないほどです。
2.住職の浅見さんたったお一人でお寺を守られていること
浅見さんは元々サラリーマンでしたが都会での生活にストレスを感じ、ここ大陽寺の住職となりました。
そんな住職のお話をぜひ聴いてみたい、と思っていました。
3.観光地化されていない、ありのままのお寺の姿があること
大陽寺は古くからの歴史を守っている禅寺ですが、日本の観光地にある華麗な寺院とは少し趣が違います。
玄関には傘や靴が並んでいたり、犬があちこち走ったりしていて、お寺の日常をリアルに感じることができる場所なのです。
お坊さんの暮らしに触れる、宿坊体験
お寺に到着したら、最初にとても古くて荘厳な本堂に通されます。
宿坊体験はここで写経をすることから始まります。
写経のやり方は、住職の浅見さんが教えてくれます。
筆先に心を集中させているうちに、写経の世界に没頭し時間が経つのを忘れてしまいます。
そして、夕食は野菜たっぷりの精進料理をいただきます。
信じられないことに、このすばらしい精進料理は住職がお一人で準備されるそうです!
外が暗くなってくると、読経の時間が始まります。
住職が唱えるお経の声とお鈴(りん)の音が、静寂なお堂に響き渡ります。
読経の後、私たちは住職の周りに座り法話を聞きます。
仏教の概念などをわかりやすく説明してくれますが、わからいことは質問もできます。
夜が更けて行くと、お寺は寒さと無音に包まれます。
布団に入る前に、露天風呂で冷えたからだを温めます。天空の露天風呂では、山や木、石といった大自然との一体感をたのしみます。温かな湯気の向こうに輝く星空を眺めながら、山寺の夜は静かに過ぎていきます。
宿坊体験で一番大事なこと
「この寺に来たら、ぜひ、朝早く起きて散歩してみてください」と住職は語ります。
大陽寺でできる宿坊体験の中で、早朝の散歩は住職がお客に一番やってほしいことなのだそうです。その言葉通り、朝早い時間にアラームをセットして、まだ薄暗いお寺の外に出てみました。
「大自然から学び、テキストとして学ぶ。」
これは700年以上にわたって禅で教えられてきた概念であり、大陽寺で言われることです。
朝の静寂さに包まれながら、私はこの教えを私自身につぶやくように高い木々の間を歩きました。大陽寺の正門、座禅堂、本堂は、すべてその周囲の自然と一体となっているような感じがしました。
座禅堂
大陽寺の境内
長い時間の流れの中で苔むした仏像を見ていると、自然の中に仏像が一体化していったのか、仏像に自然が一体化していったのか、どちらなのかわからなくなるような不思議な感覚になります。そんなことを考えながら山を歩いていると、笛のような音が聴こえてきます。木々の間から、その音の主がこちらをじっと見つめていました。
おはよう!と挨拶をしにきてくれたようです。
座禅堂の背後から太陽の光がのぞきます
日の出を拝んでいる時、この山寺が「大陽寺」と呼ばれている理由がよくわかりました。座禅堂と本堂の配置は日の出の位置と深く関係していて、太陽の光がお堂を金色に染めていきます。私たちは、その美しさと温かさを息をのむように見つめていました。
その後、住職はホットコーヒーを入れてくれました。
座禅にも挑戦
朝の読経の後、座禅堂に移動して座禅体験が始まります。
住職のお鈴の音が、座禅の始まりの合図です。
もし、集中できないときには、警策(きょうさく)と呼ぶ板で背中をたたいてもらいます。
座禅堂の中で座禅を体験した後、住職は朝食を用意してくれます。
その間、私たちは窓辺に座り、山を見ながら座禅を続けることもできます。
遠くの山々が木々の景色が美しさは、瞑想に集中するのが難しいほどです。
太陽の光のあたる場所で朝ご飯をいただいて、1泊2日の宿坊体験は終わりになります。
現実世界に戻りたくないような気持ちになります。
大陽寺へのアクセス
大陽寺の最寄り駅は、秩父鉄道の終着駅「三峰口」。池袋から訳2時間半で電車で行けます。アクセス情報はホームページにあります。事前に希望すれば住職が車で迎えにきてくれます。足に自信がある方は、三峰口からバスと徒歩で行く方法もあります(約2時間)。
車で大陽寺まで行く道路ができたのは20年前のこと。
それ以前は表参道を歩いてお寺に行っていました。表参道の一部は現在でも歩くことができます。
大血川の近くまで来ると、江戸時代に作られた大陽寺の表参道が見えてきます。ここから歩いて30分です。
十三仏の石仏が、訪れる人を出迎えるように並んでいます。
東京から約2時間で行ける、山の禅寺大陽寺。
ここでは日常からしばし離れ、心静かな特別な時間を過ごすことができます。
Information
大陽寺
住所:埼玉県秩父市大滝459
宿坊体験:1泊2食付(朝・夕食) 9,000円~
http://www.taiyoji.com/
執筆兼翻訳者 Laura
東京在住のイタリア人。ガイドブックに載っていない穴場スポットを探したり写真を撮ること、そして音楽はパンク・ロックが大好きです。お酒を飲んだり、三線を弾くことも好きです。
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この記事は2017年05月22日の情報です。 文:DiGJAPAN! 編集部
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