STORY
水都大阪 meets ART
~creator’s view クリエイターが見た水辺の風景~
水の都・大阪のものがたり
ほんの少しだけ昔の話。かつて、大阪の街には今よりずっとずっとたくさんの川や運河がいたるところに張り巡らされ、“八百八橋”と呼ばれるように、たくさんの橋が架かる世界有数の“水都”でした。人々は、橋を渡って学校や職場へと向かい、たくさんの物資が川を行き交う船によって運ばれていました。水辺が人々の生活のずっとずっとそばにあったのです。残念ながら、今では、多くの川が埋め立てられたり、高速道路の陰に隠されたりして、私たちの暮らしから少しばかり遠い存在になってしまいました。だけれども、水辺は今もなお大阪の街の一風景としてあり続けています。
そんな水都大阪の歴史や魅力を、よりたくさんの人に知ってもらいたい、再発見してもらいたいということで始まったのがこの『水都大阪meets ART』です。水辺にはたくさんのドラマやストーリーがありますが、忙しい日々の生活の中では、なかなかそれらに気付くのは難しい。そこで、それらの魅力を、クリエイターの目を通じて感じてもらいたい。水辺ってこんな面白さがあったんだ、こんな風な見方があるんだと、驚き、楽しんでいただけたらと思います。そしてぜひ実際に大阪の水辺へ足を運んでみてください。
今回は関西在住の6名のクリエイターが、水都大阪の水辺をテーマに、思い思いの場所で作品を描き、その場所の思い出やエピソードについて語っています。それぞれの水辺への思いが込められた作品をぜひお楽しみください。
■creator's view 01
【クリエイターコメント】
約10年間、大阪の印刷会社に勤めていました。兵庫から電車通勤をしていて、寝起きでぼーっとしたまま電車に乗って、淀川を越える時に仕事モードのスイッチが入る、車窓から見る淀川は自分にとって1日のスタートラインのようなものでした。日々の暮らしの中で、川へ行って何かをするということはなかったですが、毎日目にしてスイッチを入れてくれた淀川は自分にとってとても印象深い川です。退職した今では、会社員時代のことを思い出させてくれる存在になりました。
淀川を渡れば、いつでもあの頃を思い出すことができます。
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関西を拠点に、デザイン・イラスト・ファッション・イベントなど、とくにジャンルを限定せずに、遊びを大切にしながらいろんなものをつくっています。
https://zibun100.com/
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■creator's view 02
【クリエイターコメント】
わたしは大川にかかる天神橋を描きました。橋の途中にあるらせん階段を降りて天神橋の白い鉄骨を下から眺めました。古くからある橋なのでしょう、地味だけどなんだか味わい深い建築の美しさにしばらく見とれていました。博物館で見た恐竜の骨のようにも思えました。
タイミングが合えば剣先噴水の大きなアーチも見ることができます。ここは中之島公園の一番端で、芝生が気持ち良い場所です。風が吹くと噴水のしぶきが顔に当たりました。遊覧船が通るたびに大きくゆれる川面や、種類の違う小舟が川を行き来するのをぼーっと眺めていると自分が大きな船の先頭に立っているような気持ちになりました。
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島根県出身 大阪府在住。画家・イラストレーター。展覧会やアートフェアへの出展を中心に作家活動をしています。近年、イラストレーションの仕事にも活動の幅を広げ、アートとイラストと、アーティストとしての在り方を模索しています。
http://www.visiontrack.jp/coordinate_artist/miyazaki/
Twitter/Instagram
■creator's view 03
【クリエイターコメント】
天保山は、大阪で有数の観光地である。
海遊館や大観覧車、天保山マーケットプレースがあり、祖父母が弁天町にいるので帰省の際よく寄っていた。初めて友人の結婚式に参列したのも、この近くの式場だ。幸せそうな二人に嬉しくなったのを覚えている。ここは海の側なのでいつも強い風が吹いていて、向こう岸まで大きな橋がかかり、時折大型の客船が泊まっている。取材で訪れた時は流行病が落ち着いてきた時期で、家族連れや外国の方で賑わっていた。担当者の方と、近々開催の万博の話などをして歩く。小さい頃に見た天保山はとても低くて、大人になって見てもやっぱり低かった。先述の橋は車しか通れないため無料の渡船があると教えていただき、解散後に一人で乗ってみる。立ったまま対岸まであっというまに運ばれて、必死で景色を撮った。ジンベイザメを見てゆっくりご飯を食べて帰る場所の、違う一面を知れて嬉しい。今度久しぶりに家族と来てみよう。
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大阪在住のイラストレーター。『誰かがみた風景』をコンセプトに、色々な街をもとにした絵を描いています。
https://saigetsu1225.booth.pm/
Twitter/Instagram
■creator's view 04
【クリエイターコメント】
私にとって馴染みの大阪の川といえば、大川である。
私は大川が流れる桜ノ宮という地域に住んでいる。大川は京都の鴨川くらいの幅で両岸を隔てすぎない程良い川だと思っている。川沿いは公園になっていて、たくさんの桜の木や鳥や亀やヌートリアに微生物、散歩する犬そして人、都会の街中にいろんな生物が集まってくるのがこの場所だ。田舎育ちの私はその中にただ混じっていることがとても安心する。そこでスケッチをすれば頭が空っぽになり気持ちよく筆が進む。終いにはビールが呑みたくなる。
意外と知られてないが桜ノ宮には不自然な「ビーチ」がある。砂浜を入れ、人工的に作った川のビーチである。自然生物の保護など深い理由もあるのかもしれないがビーチを川の横に作ってしまうとは、私はなんて愉快だろうと思った。大阪はやっぱり面白いなと思った、そして川を愛しているのだなと思う。絵はそのビーチで座って描いたものだ。砂浜の上では呑気になる。やはり呑んでしまう。
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主に画業。島根県生まれ、大阪市在住であったがこの記事を描いたあと神戸に引っ越す。書籍の装画などのイラストレーションや展覧会での発表などを中心に活動。
https://mameikeda.com/
Twitter/Instagram
■creator's view 05
【クリエイターコメント】
「大阪の水辺の景色」と聞いてパッと思い浮かんだのが、淀屋橋周辺の夜の風景でした。仕事が終わって帰路につく人たちを照らす無数のビルの明かりと、それをうつす真っ黒な水面。ひとつひとつの窓の明かりの中で、いまも頑張っている誰かがいるのだと思うと、励まされるような気持ちになります。同様に自分がつくる窓の明かりも、知らないうちに誰かを励ましていることもあるのかなぁとか考えたりします。
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イラストレーター・マンガ家・ラジオDJ。京都出身。自身のイラストを元にデザイン、マンガ、グッズ、映像作品など幅広い作品へ展開させ活動している。テキストやコラムの挿絵、都市のプロモーション企画、イベントやラジオ番組のグッズデザイン、プロジェクションマッピング、行政や教育関係のイラストなど、さまざまな制作物を手がけている。FM京都『FLOWER HUMMING』 毎週日曜20時OA中。
https://sakinpo610.myportfolio.com/
Twitter/Instagram
■creator's view 06
【クリエイターコメント】
大正区と西成区の間を流れる木津川に設けられた落合上渡船場の風景です。まだ幼き自転車探検少年だった頃、あちらこちらに繰り出している最中に発見し、それ以来、私の原風景としていつでも心にとどまり続けている場所です。大阪市の港湾エリアでは、数か所で渡し船が地元民の生活の足として現役で活躍しています。ここでは、川とともにある暮らしが今もなお営まれていて、かつて水の都と呼ばれた大阪の面影をしのばせます。渡し船は無料で誰でも利用することができます。たった2分の船旅はいかがですか?
profile
大阪市在住。写真・似顔絵・鳥観図・ペン画・シルクスクリーンなど、ジャンルを問わず様々な創作活動を行っています。本企画の総合ディレクターとして動画作成と音楽も担当。
https://arkibito.hatenablog.com/
まとめ
『水都大阪meets ART』いかがだったでしょうか。ひとえに水辺といっても、思い描く場所も、思い出も人ぞれぞれ。その1つ1つにドラマがあり、とても興味深いものですね。
今回紹介した場所以外にも、大阪の水辺にはたくさんの憩いのスポット、おしゃれなカフェ、歴史的な建築物、美術館などがあり、各種クルーズ船をはじめ様々なリバーアクティビティも充実しています。今度は、ぜひ水都大阪の水辺へと出かけて、あなたなりの水辺のストーリーをスケッチしてみてください。
水都大阪コンソーシアムとは?
かつて水の都と讃えられた大阪の街。水都大阪の賑わいを再び取り戻すべく行われている都市再生プロジェクトです。世界的にも珍しい、川が口の字に廻る「水の回廊」を中心として、シンボルとなる空間づくりや船着き場の整備、護岸や橋梁などのライトアップや、水辺に親しむための各種イベントの開催など、水辺の生活を活気ある賑わいの場へと再生するためのさまざまな試みを展開しています。Information
水都大阪コンソーシアムhttps://www.suito-osaka.jp/
YouTube「水都大阪チャンネル Aqua Metropolis Osaka ch」
Twitter/Instagram/facebook
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この記事は2023年04月10日の情報です。 文:DiGJAPAN! 編集部
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