阿波踊り集団 寶船

STORY

 

熱中ニッポン vol.1
JAPAN EXPOで大絶賛!
阿波踊り集団 寶船

 

 
 

 “ニッポン”を熱くするリーダーをインタビュー形式で紹介する、熱中ニッポン。このシリーズでは、芸能、アート、農業、ファッション、音楽、IT企業など、さまざまなグラウンドで活躍するリーダーにフォーカスします。

第1回目は、JAPAN EXPOで大絶賛された阿波踊り集団 『寶船(たからぶね)のリーダー、米澤渉さんにお話を聴きました。

 

本能で感じる「楽しさ」に国境も世代もない

 

—創作舞踊集団 寶船。2015年は寶船にとってどんな1年だったでしょうか?

米澤:1995年に東京で父 米澤曜(あきら)が創設した寶船ですが、2014年に20周年を迎えることができました。発足21年目となる2015年は、世界・日本で約100公演、200以上のステージをこなし、精力的に活動してきました。4月のニューヨークにはじまり、7月はパリでのJAPAN EXPO 2015、ロンドンのHYPER JAPAN 2015、8月は香港でも海外公演をさせていただきました。海外だけでなく、夏には阿波踊りの本場、徳島での単独公演も行いました。



寶船


—海外での阿波踊り、手ごたえは?

基本的には、どの国に行っても楽しんでもらうベースは一緒だと思っています。日本でおもしろいと思ってもらえるものは、海外でも楽しんでもらえる。本能で感じる「楽しさ」には国による違いはない。「楽しい!」と思ったときにこぶしをあげるのか、声をだすのか、その表現の仕方が違うだけ。はじめてそのことに気づいたのは、2011年、ハワイのホノルルフェスティバル。寶船にとって初めての海外公演でした。私は子どものころ、クラスメイトに阿波踊りをやっていることをなかなか話せなかった経験があるのですが、遠い異国で言葉が通じない相手でも、阿波踊りに共感してくれることに強烈なカルチャーショックを受けました。以来、日本、世界のあらゆるところで踊っていく中で、「言葉が通じなくても感動は伝わる」ことが強い確信にかわっていきました。

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—パリとニューヨークで、「楽しい!」の反応はどう違うのか?

パリのJAPAN EXPO に来るのは、日本文化に興味があるお客さま。2014年に公演したとき買ったTシャツを着て、2015年も来てくれるファンがいます。公演後もSNSを通じてファンとの交流を継続できるので、1年会わなかった感じがしない。世界のファンとつながり続けている感じです。
ニューヨークはパリとは違って、どの国の文化であるかとか、トラディショナルだからすばらしいとかは関係なく、エンターテイメントとして純粋にオモシロイものを求めてきます。
いずれにせよ、どの国でも最後は一緒に踊って、阿波踊りの体験をしてもらいます。日本人だと恥ずがしがってしまいますが、海外は皆踊ってくれますね。
 
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発信する側にある「日本」という固定観念


—クールジャパンという追い風を、寶船はどう考えるのか?

クールジャパンのコンテンツって、アニメ、ゲームなど現代的なものと、茶道・歌舞伎など伝統的なものが、それぞれバラバラのブースで紹介されていて、それをバラバラのお客さまが見て帰る感じなんですよ。日本人にとっても歌舞伎は若者には難しく感じるところがあるけれど、アニメやゲームは年配の方にはわかりにくいですよね。どちらも同じ日本なのに、どちらかに偏りすぎている。そのことが、日本に対しての誤解を産みそうな気がして。もっと、若者から年配の方まで楽しめるものがあるはずで、阿波踊りはまさにそこにハマる。阿波踊りは400年の伝統がありながら、年齢を問わず参加できるしキャッチーなカッコよさもある。二極化しがちな日本像に、寶船が風穴をあけたい、と思っています。

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—なぜ、ステレオタイプな日本像に陥りがちなのか?

クールジャパンを発信している日本側に固定観念があって、商業的にアニメやゲームの方が海外で売れるので、そちらを推したいというところはあると思います。一方で、伝統的な歌舞伎は海外で観てもらおうと思っても、舞台装置の準備が必要だし、外国の方にも理解できる翻訳が必要でハードルが高い。海外の人の中にも黒沢映画が好きな世代もいれば、「ワンピース」で育った世代もいる。でもどっちも日本なので、受け手に別々の日本だと思われているのがもったいないような気がします。


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進化させるためのキーワード「触れる」と「和える」


—伝統芸能の本質的なハードルはどこにあるのか?

日本人にとっても伝統芸能は、歴史があるがゆえに、どこか「触れてはいけもの」のような距離感があると思います。でも、実は歌舞伎も昔はエンターテイメントでした。歴史には敬意を払うべきだけれど、大事にしすぎて本質がわからなくなってしまってはもったいない。伝統芸能こそもっと、日本人自身が楽しんでいいものだと思っています。

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—では、伝統芸能にどう触れて楽しめばいいのか?

「和」という字は、「和む(なごむ)」「和える(あえる)」と読みます。芸能もミックスして、融合して、「和える」。単にAとBを足すのではなく、クリエイティブに生み出す力が大事。海外の日本のエンタテインメントは、長唄とポップスが混ざっていたり、和に「+α」したものが多いです。そういうものが、日本を新しい文化を作っていくし、日本人が得意なんだと思っています。
 
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壁を打ち破る者に必要な信念と説明能力

 

—阿波踊りの中では「異分子」ともいえる寶船だが?

新しいことにチャレンジするときに抵抗があるのは当たり前。先達に納得してもらうには、自分たちが何のためにやっているのか、目的がぶれないようにしないといけない。阿波踊りを踊る先に何があるのか、考えた末のわたしたちの理念は「世代や国を超えて感動を伝える」ということ。踊りはそのための手段。そんな風に、寶船の理念をつきつめて考えておくようにしています。それから、情報発信には気を使っています。ロジカルに考えて筋道立てて説明できるよう準備しています。若者の思いつきで、ぶっ壊すみたいに思われたくはないので。

寶船


—寶船が大事にする、阿波踊りの本質は。

阿波踊りの中には、手や足の動かし方の形をつきつめるやり方もありますが、それだと下手な人は踊れなくなってしまいます。それよりも、寶船は踊ることを楽しむ気持ちの方が大事だと思ってます。たとえば、よちよち歩きの子どもが法被を着て踊っていれば、見るものの心を一瞬でつかんでしまいます。何十年も踊っているベテランでさえも、瞬時にこえてしまうほど魅了する力があって、そういうことの方が手や足の形よりも大事だと考えています。

寶船


—変化させるものと、変化させないものは。

阿波踊りは大衆芸能で、時代によって踊り方が全然違います。今、踊っている阿波踊りは現代のスタイルであって、大正・昭和はジャズの流行に影響を受けてカンカン帽や管楽器を使ったりもしました。江戸時代にさかのぼると歌舞伎の模倣だったりする。一方で、昔から身分も性別も関係なく、子どもから大人まで一緒にたのしむのが阿波踊り。そこを拡大解釈すれば、国も時代も超えて楽しむものなんだ、という寶船の理念につながってきます。

寶船

 

人生のアイデンティティを表現活動にこめる

 

—米澤渉さんの中での、阿波踊りに対する印象の変化は?

20代はずっとバンドをやってたんです。インディーズでCDを出したり、ライブハウスで全国ツアーもやってました。阿波踊りとは対照的なロックバンドで、曲作りしてボーカルして。そんなとき、あるプロデューサーから言われたんです。「売れるアーティストは、人生のアイデンティティを込めて表現している」、「自分の人生で得たものを作品に投影しないとだめだ」と。僕の場合は、それが阿波踊りで。昔は友達に言えなかった阿波踊りが、自分のやりたい音楽を通じて、実は自分の武器だと気付かせてもらいました。遠回りだったかもしれないけど、阿波踊り以外に表現活動の軸となるものはないし、自分らしく生きるときの自分の武器も阿波踊りだ、と気づいたことで、必然と今のマインドになっていったというところです。
 
バンドの方向性に悩んでいて解散した2011年は、寶船がはじめて海外公演を行ったのと同じ年。それまでやっていたバンドではなく、阿波踊りの方で海外の人が喜んでくれたっていうカルチャーショックと、ずっと自分のオリジナリティを探していながらも人のまねばかりしていた音楽への挫折とがちょうど重なって。「今、自分が信じられるのは阿波踊りなのかも」そんな気持ちでした。海外のお客さまのおかげで、自己肯定感が生まれたんです。クラスメイトにも阿波踊りのことを話せなかったのに、海外の人が喜んでくれたことが、自分にはすごく大きかったと思います。

寶船

 

「多様化」であっても「孤立化」させてはいけない

 

—現代の日本に大切なものは?

日本は多様化の時代。でも、多様化は孤立化じゃないと思っています。パソコンやマンガの前で孤立化させてはいけない。みんなバラバラな個性でも、踊りがはじまれば1つの空間でたのしめる阿波踊りのように、多様化した社会はひとつになろうと思えばなれる、というところが大事。若者がハロウィンに夢中になるように、みんなひとつになれる場所を求めている。江戸時代のころから、そういう人の本質は変わっていないと思います。

—そのために、寶船がやっていることは?

若者向けに、学校公演と芸術鑑賞会には力を入れています。学校主催の芸術鑑賞会は、つまらなくてたいくつな印象があるようです。でも、寶船の場合は、観終わった後でファンになってくれる学生がすごく多いです。若者にもっと日本の文化のよさに気がついてもらいたいですね。また、僕らは学校でも老人ホームでも公演をします。学校でも老人ホームでも、やることは変わらないんです。どこででも喜んでもらえることが、寶船の強み。もっともっと広い世代に見てもらいたいです。そしてこれからは、多くの人と一緒に踊っていけるように、ワークショップみたいな形で、誰でも阿波踊りをはじめやすい環境を作りたいです。

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未来へ。寶船は力強く出航する

 

— 今後の寶船の目標、展望は?

阿波踊りだけでなく、いろんなアーティストと協力して、フェスティバルみたいなものを日本でやりたいなと思い、企画しています。芸人、アイドル、アーティスト、違うジャンルですけど、オモシロイ人たちを集めてしまいたいなと。そういうイベントをやりたいです。
 
それから、寶船に入る人を増やして、阿波踊りのムーブメントにしたいと思っています。僕らが少数でやっていても、おそらく文化ってなかなかムーブメントになりにくい。いろんな阿波踊りの業界が祭りの枠を超えて、芸能として立ち上がっていければいい。ライバルにはなるけれど、長い目で見たら文化としてはその方がよいはずなので。数年後には海外で活躍するグループにもどんどん阿波踊りを伝授して、寶船の海外支部を根付かせていきたいです。
 
寶船

— 米澤さんは訪日外国人観光客にどんな旅をしてもらいたいですか?

まず、寶船を観てください(笑)。僕らのこと以外であれば、日本の田舎を体験してほしいですね。母の実家が長野の駒ヶ根なんですけど、雨の降るかどうか、イノシシが出るかとか出ないとか、そんな自然に寄り添った生活が日本人らしいんじゃないかと。あとは、美味しいものを食べてほしいですね。

— 最後に、読者へのメッセージを

グローバル化が進み、誰とどこで何をして働くのか、選択肢が増えています。私にとって仕事を選ぶということは、職業名や職種を選ぶのではなくって、やりたいことを探すことだと思います。自分がやりたいことで誰がよろこぶのか、突き詰めて考えて実行していけば、それが自分にとって人生で大事な仕事になっていく。私はこれからも、阿波踊りの活動を通じて、そういった価値感を伝えていけたら、と思っています。

 

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取材後記

 

寶船、阿波踊り、伝統芸能、ニッポン、世界。米澤さんの視線はミクロからマクロまで、自在に行き来しながらインタビューは進みました。また、カメラの前では、エネルギッシュな阿波踊りのダンサーとしての顔と、経営者としてのロジカルな顔。真逆の顔を見せてくれました。視座の上げ下げと幅の広さ。これをバランスさせることができるのは、米澤さんの中にブレない信念として阿波踊りへの強い思いがあるからなのだろうと思います。

研ぎ澄まされた言葉の数々が心にささる、素敵なインタビューの時間でした。
ぜひ、みなさんも生で寶船の阿波踊りを見てみてください。とにかく、すごい迫力です。(寶船の公演情報はオフィシャルサイトをご覧ください。)

寶船

 

Profile

米澤 渉 Wataru Yonezawa
一般社団法人アプチーズ・エンタープライズ プロデューサー
寶船 BONVOリーダー/山形県米沢市おしょうしな観光大使。
日本PRのCM『日本の若さが世界を変える』に出演。「my Japan Award 2014」 にて《箭内道彦賞》を受賞。
 

Information

寶船オフィシャルサイト
http://takarabune.org/
寶船オフィシャルfacebook
https://www.facebook.com/Takarabune.official
寶船オフィシャルインスタグラム
https://www.instagram.com/takarabune_official/




 

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この記事は2015年12月25日の情報です。 文:Yuko Tsuruoka

 

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